過度なランニングは大腸がんのリスクになる?~最新の研究から考える運動と健康の関係~

いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。
2026年の箱根駅伝は青山学院大学の大会新記録+3連覇という結果で幕を閉じました。
中でも山上りの5区のランナー:黒田朝日さんの異次元の走りに圧倒された大会でしたね。
さて、今回はこの駅伝ならぬランニングと大腸がんという一見関連性のなさそうな二つの点について調べた論文の内容について紹介したいと思います。
「運動は健康に良い」「がん予防には運動が大切」
これは広く知られた事実であり、特に大腸がんに関しては、適度な有酸素運動が発症リスクを下げることが多くの研究で示されています。
一方で、近年「過度なランニング(長距離・高負荷の持続的運動)を行う人では、大腸がんのリスクがかえって高まる可能性がある」とする論文が報告され、注目を集めています。
今回はこの研究内容を踏まえつつ、運動と大腸がんの関係について整理してみたいと思います。
■ 論文の概要:ポイントは「過度」であること
問題となっている研究では、一般的な運動習慣を持つ人と、長期間にわたり高強度・長時間のランニングを続けている人(いわゆる過度のランナー)を比較しています。
その結果、
・適度な運動を行う人では大腸がんリスクは低下
・一方で、極端に運動量が多い集団では、特定条件下で大腸がんリスクが上昇する可能性が示唆されました。
重要なのは、この研究が
「運動=悪い」
「ランニング=大腸がんの原因」
と結論づけているわけではない点です。
あくまで「過度・極端な運動負荷」が長期間続いた場合の影響を検討したものです。
■ なぜ過度なランニングが影響する可能性があるのか
論文や関連研究では、以下のようなメカニズムが推測されています。
① 消化管虚血(腸への血流低下)
長時間の激しいランニングでは、血流が筋肉や心臓に優先的に回され、腸管への血流が低下します。
これが慢性的に繰り返されると、腸粘膜の障害や炎症を引き起こす可能性があります。
② 酸化ストレスの増加
過度な運動は活性酸素を増加させ、細胞DNAへのダメージを引き起こす可能性があります。
通常は抗酸化機構が働きますが、負荷が過剰な場合は修復が追いつかないこともあります。
③ 免疫機能の一時的低下
「オープンウィンドウ理論」と呼ばれる考え方があり、激しい運動後には一時的に免疫機能が低下します。
これが慢性的に繰り返されると、がん監視機構への影響が懸念されます。
④ 腸内環境の変化
極端な運動負荷や体脂肪の過度な減少は、腸内細菌叢(腸内フローラ)にも影響を与える可能性が指摘されています。
■ 誤解してはいけない重要な点
この研究から導かれる結論は、
「走らない方がよい」ではありません。
むしろ、
・ウォーキング
・軽度~中等度のジョギング
・定期的な運動習慣
これらは大腸がんを含む多くの生活習慣病の予防に有効であることは、現在も揺るぎない事実です。
問題となるのは、
・毎日の長距離走
・休養をほとんど取らない高強度トレーニング
・体調不良や消化器症状を無視した継続
といった「体のサインを無視した過度な運動」です。
■ まとめ
・適度な運動は大腸がん予防に有効
・しかし、過度で極端なランニングが長期間続く場合、大腸がんのリスクが生じる可能性がある
・「量」よりも「バランス」と「休養」が重要
以上が今回のメッセージとなります。
なお、当院では、大腸カメラを含め、消化管の健康管理を総合的にサポートしています。
適切な運動習慣があるから病気にならないということはありませんので、一度ご自身の体を客観的にチェックしてみることをおすすめします。
<参考文献>
・Cannon TL, et al. JCO. 2025 May 28. [Epub ahead of print]
・Marathon Runners Face Unexpected Colon Cancer Risk, New Study Suggests / Health
・Liang PS, et al. Gastroenterology. 2022;163:742-753.
・Al-Beltagi M, et al. World J Gastroenterol. 2025;31:106835.
いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史
日本内科学会認定 内科認定医、総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本消化管学会認定 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会認定 ピロリ菌感染症認定医
2026年の箱根駅伝は青山学院大学の大会新記録+3連覇という結果で幕を閉じました。
中でも山上りの5区のランナー:黒田朝日さんの異次元の走りに圧倒された大会でしたね。
さて、今回はこの駅伝ならぬランニングと大腸がんという一見関連性のなさそうな二つの点について調べた論文の内容について紹介したいと思います。
「運動は健康に良い」「がん予防には運動が大切」
これは広く知られた事実であり、特に大腸がんに関しては、適度な有酸素運動が発症リスクを下げることが多くの研究で示されています。
一方で、近年「過度なランニング(長距離・高負荷の持続的運動)を行う人では、大腸がんのリスクがかえって高まる可能性がある」とする論文が報告され、注目を集めています。
今回はこの研究内容を踏まえつつ、運動と大腸がんの関係について整理してみたいと思います。
■ 論文の概要:ポイントは「過度」であること
問題となっている研究では、一般的な運動習慣を持つ人と、長期間にわたり高強度・長時間のランニングを続けている人(いわゆる過度のランナー)を比較しています。
その結果、
・適度な運動を行う人では大腸がんリスクは低下
・一方で、極端に運動量が多い集団では、特定条件下で大腸がんリスクが上昇する可能性が示唆されました。
重要なのは、この研究が
「運動=悪い」
「ランニング=大腸がんの原因」
と結論づけているわけではない点です。
あくまで「過度・極端な運動負荷」が長期間続いた場合の影響を検討したものです。
■ なぜ過度なランニングが影響する可能性があるのか
論文や関連研究では、以下のようなメカニズムが推測されています。
① 消化管虚血(腸への血流低下)
長時間の激しいランニングでは、血流が筋肉や心臓に優先的に回され、腸管への血流が低下します。
これが慢性的に繰り返されると、腸粘膜の障害や炎症を引き起こす可能性があります。
② 酸化ストレスの増加
過度な運動は活性酸素を増加させ、細胞DNAへのダメージを引き起こす可能性があります。
通常は抗酸化機構が働きますが、負荷が過剰な場合は修復が追いつかないこともあります。
③ 免疫機能の一時的低下
「オープンウィンドウ理論」と呼ばれる考え方があり、激しい運動後には一時的に免疫機能が低下します。
これが慢性的に繰り返されると、がん監視機構への影響が懸念されます。
④ 腸内環境の変化
極端な運動負荷や体脂肪の過度な減少は、腸内細菌叢(腸内フローラ)にも影響を与える可能性が指摘されています。
■ 誤解してはいけない重要な点
この研究から導かれる結論は、
「走らない方がよい」ではありません。
むしろ、
・ウォーキング
・軽度~中等度のジョギング
・定期的な運動習慣
これらは大腸がんを含む多くの生活習慣病の予防に有効であることは、現在も揺るぎない事実です。
問題となるのは、
・毎日の長距離走
・休養をほとんど取らない高強度トレーニング
・体調不良や消化器症状を無視した継続
といった「体のサインを無視した過度な運動」です。
■ まとめ
・適度な運動は大腸がん予防に有効
・しかし、過度で極端なランニングが長期間続く場合、大腸がんのリスクが生じる可能性がある
・「量」よりも「バランス」と「休養」が重要
以上が今回のメッセージとなります。
なお、当院では、大腸カメラを含め、消化管の健康管理を総合的にサポートしています。
適切な運動習慣があるから病気にならないということはありませんので、一度ご自身の体を客観的にチェックしてみることをおすすめします。
<参考文献>
・Cannon TL, et al. JCO. 2025 May 28. [Epub ahead of print]
・Marathon Runners Face Unexpected Colon Cancer Risk, New Study Suggests / Health
・Liang PS, et al. Gastroenterology. 2022;163:742-753.
・Al-Beltagi M, et al. World J Gastroenterol. 2025;31:106835.
いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史
日本内科学会認定 内科認定医、総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本消化管学会認定 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会認定 ピロリ菌感染症認定医

