大腸カメラ挿入のテクニックのひとつ“体位変換”とは?
いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。
大腸カメラを受けたことのある方なら検査中に体の向きを変えたという覚えはありませんか?
実はこれ、大腸カメラをスムーズに挿入するためのテクニックの一つです。
今回はこのややマニアックな体位変換について解説したいと思います。
大腸カメラを受けたことがない方においては、少しでも検査のイメージに、また受けたことのある方においては、何であっち向いたりこっち向いたりしたのだろう?と思った方もいると思いますので、この体位変換の意味の理解に繋がってくれれば幸いです。
まず、大腸は単純な形ではなく、立体的に蛇腹状にくねくねと曲がっています。
長さは約1.7メートルで、身体に固定されている部分(直腸、下行結腸、上行結腸)もあれば、自由に動く部分(S状結腸、横行結腸)もあります。
この複雑な形状が人によっては個人差となり「大腸カメラは痛くて大変」ということに繋がるのです。
もし全ての部位が固定されていて真っ直ぐな形状なら、カメラを押し込んでいくだけでいいので、大腸カメラの挿入は何も難しくないかと思われます。
大腸カメラを受けたことのある方なら検査中に体の向きを変えたという覚えはありませんか?
実はこれ、大腸カメラをスムーズに挿入するためのテクニックの一つです。
今回はこのややマニアックな体位変換について解説したいと思います。
大腸カメラを受けたことがない方においては、少しでも検査のイメージに、また受けたことのある方においては、何であっち向いたりこっち向いたりしたのだろう?と思った方もいると思いますので、この体位変換の意味の理解に繋がってくれれば幸いです。
まず、大腸は単純な形ではなく、立体的に蛇腹状にくねくねと曲がっています。
長さは約1.7メートルで、身体に固定されている部分(直腸、下行結腸、上行結腸)もあれば、自由に動く部分(S状結腸、横行結腸)もあります。
この複雑な形状が人によっては個人差となり「大腸カメラは痛くて大変」ということに繋がるのです。
もし全ての部位が固定されていて真っ直ぐな形状なら、カメラを押し込んでいくだけでいいので、大腸カメラの挿入は何も難しくないかと思われます。
S状結腸と横行結腸に個人差があります
大腸カメラの検査は、一般的に両膝を軽く曲げ、お尻を突き出し、体の左側を下にして横に寝た状態(左側臥位)で開始します。
その後、検査の進行に合わせて身体の向きを変えていきます。
S状結腸に入ったところかS状結腸と下行結腸の移行部の大きな屈曲あたりで仰向けの状態(仰臥位)になります。
その際にカメラに足がぶつからないように右足を左膝の上に乗せて組んだ状態になってもらいます。
こうして上を向いたままの体勢で終点の盲腸まで進みます。
場合によっては右側を下にした横向き(右側臥位)になることもあります。
このように体勢を変えることで、重力によって大腸の形が変わり、曲がり角が緩やかになります。
また、腸の中の空気や液体が移動することで病変が観察しやすくなったり、ポリープ切除もしやすくなったりします。
大腸カメラが“痛い”というのはこの曲がり角にカメラが当たってしまったり、腸が伸びてしまったり、腸がねじれてしまったりすることで生じます。
体位変換は重力を意識することで鋭角な曲がり角にカメラが当たってしまったり、カメラを押しても途中の腸が伸びてしまって先端に力が伝わらなくなってしまったりした際に有効なのです。
ただ闇雲に体位変換をすればいいというわけではなく、適切なタイミングでしないと効果は乏しいものとなり、そこに内視鏡医の経験と知識が生きてきます。
大腸カメラによる痛みというのは、鎮静剤によって感じにくくすることもできますが、こうしたテクニックで出にくくすることの方がより重要と言えます。
なお、鎮静剤を使用している場合では患者さんは眠ってしまっているので、この体位変換を看護師さんが行っています。
以上、今回は大腸カメラにおける体位変換について説明しました。
大腸カメラは奥が深く、内視鏡医の腕により患者さんにかかる負担が変わってくるのは事実です。
また、患者さんの大腸の個人差がそのまま難易度に繋がってくることも事実です。
つまり、お腹の手術をしたことが影響したり、元来大腸が長い人である場合はどの医師が挿入しても難しいのですが、そこに私自身は魅了され、長年にわたって大腸カメラに従事してきました。
“以前、他でやったときは大変だったけど、今回は楽でした”
という感想を聞くたびに大変うれしく思いますし、更なる精進を意識しています。
なお、大腸カメラ挿入には体位変換以外にも以下のようなテクニック(工夫)があります。
・軸保持短縮法・・極力腸を伸ばさず、ねじれないように適宜、腸を折りたたみながら挿入するテクニック
・用手圧迫法・・腸がどうしても伸びてしまう際には外側から伸びる部位を押さえることで挿入をサポートするテクニック
・二酸化炭素送気・・視野を確保するために用いるのは空気ではなく吸収の早い二酸化炭素を用いることでお腹の張りの軽減に繋がる工夫
・鎮静剤の使用量・・年齢、体格に応じて鎮静剤の量を微調整することで安全性と苦痛除去のバランスを意識
・浸水法・・内視鏡の先端から水を注入して空気の代わりに水を潤滑剤として内視鏡を挿入する方法
(水の注入は空気注入と違って腹部の膨満感が少なく、水によって摩擦が減って浮力が生まれるため、内視鏡の挿入もスムーズになるという原理)
これらを駆使することで、少しでも苦痛がなく、そして質の高い検査をと励んでおりますので、今回の内容が大腸カメラは怖いなあと思われている方へ少しでも後押しとなれたら幸いです。
当院では大腸カメラのハードルを少しでも低くしたいと取り組んでいます
いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史
日本内科学会認定 内科認定医、総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本消化管学会認定 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会認定 ピロリ菌感染症認定医
S状結腸に入ったところかS状結腸と下行結腸の移行部の大きな屈曲あたりで仰向けの状態(仰臥位)になります。
その際にカメラに足がぶつからないように右足を左膝の上に乗せて組んだ状態になってもらいます。
こうして上を向いたままの体勢で終点の盲腸まで進みます。
場合によっては右側を下にした横向き(右側臥位)になることもあります。
このように体勢を変えることで、重力によって大腸の形が変わり、曲がり角が緩やかになります。
また、腸の中の空気や液体が移動することで病変が観察しやすくなったり、ポリープ切除もしやすくなったりします。
大腸カメラが“痛い”というのはこの曲がり角にカメラが当たってしまったり、腸が伸びてしまったり、腸がねじれてしまったりすることで生じます。
体位変換は重力を意識することで鋭角な曲がり角にカメラが当たってしまったり、カメラを押しても途中の腸が伸びてしまって先端に力が伝わらなくなってしまったりした際に有効なのです。
ただ闇雲に体位変換をすればいいというわけではなく、適切なタイミングでしないと効果は乏しいものとなり、そこに内視鏡医の経験と知識が生きてきます。
大腸カメラによる痛みというのは、鎮静剤によって感じにくくすることもできますが、こうしたテクニックで出にくくすることの方がより重要と言えます。
なお、鎮静剤を使用している場合では患者さんは眠ってしまっているので、この体位変換を看護師さんが行っています。
以上、今回は大腸カメラにおける体位変換について説明しました。
大腸カメラは奥が深く、内視鏡医の腕により患者さんにかかる負担が変わってくるのは事実です。
また、患者さんの大腸の個人差がそのまま難易度に繋がってくることも事実です。
つまり、お腹の手術をしたことが影響したり、元来大腸が長い人である場合はどの医師が挿入しても難しいのですが、そこに私自身は魅了され、長年にわたって大腸カメラに従事してきました。
“以前、他でやったときは大変だったけど、今回は楽でした”
という感想を聞くたびに大変うれしく思いますし、更なる精進を意識しています。
なお、大腸カメラ挿入には体位変換以外にも以下のようなテクニック(工夫)があります。
・軸保持短縮法・・極力腸を伸ばさず、ねじれないように適宜、腸を折りたたみながら挿入するテクニック
・用手圧迫法・・腸がどうしても伸びてしまう際には外側から伸びる部位を押さえることで挿入をサポートするテクニック
・二酸化炭素送気・・視野を確保するために用いるのは空気ではなく吸収の早い二酸化炭素を用いることでお腹の張りの軽減に繋がる工夫
・鎮静剤の使用量・・年齢、体格に応じて鎮静剤の量を微調整することで安全性と苦痛除去のバランスを意識
・浸水法・・内視鏡の先端から水を注入して空気の代わりに水を潤滑剤として内視鏡を挿入する方法
(水の注入は空気注入と違って腹部の膨満感が少なく、水によって摩擦が減って浮力が生まれるため、内視鏡の挿入もスムーズになるという原理)
これらを駆使することで、少しでも苦痛がなく、そして質の高い検査をと励んでおりますので、今回の内容が大腸カメラは怖いなあと思われている方へ少しでも後押しとなれたら幸いです。
当院では大腸カメラのハードルを少しでも低くしたいと取り組んでいます
いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史
日本内科学会認定 内科認定医、総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本消化管学会認定 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会認定 ピロリ菌感染症認定医