グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



HOME >  院長ブログ >  注射じゃないインフルエンザワクチン! ~点鼻インフルエンザワクチン「フルミスト」について~

注射じゃないインフルエンザワクチン! ~点鼻インフルエンザワクチン「フルミスト」について~


いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。

毎年秋から冬にかけて流行するインフルエンザは、発熱や咳、全身倦怠感を伴うだけでなく、高齢者や基礎疾患を持つ方にとっては重症化のリスクも高い感染症です。
その予防の柱となるのが「インフルエンザワクチン」ですが、従来は注射による接種が主流でした。
ところが海外では、注射ではなく「鼻にスプレーする」タイプのワクチンが開発・普及しており、それが点鼻インフルエンザワクチン「フルミスト(FluMist)」です。
今回はこの特徴的なワクチンについて詳しく解説するとともに、当院での方針をご紹介します。

【フルミストとはどんなワクチン?】
フルミストはアメリカやヨーロッパで広く使用されてきた点鼻型のインフルエンザワクチンです。
日本でも2015年に承認され、現在は2歳以上18歳未満の小児・思春期の方に使用可能となっています。
従来の注射型ワクチンとの大きな違いは「投与経路」です。
鼻にスプレーを噴霧することで、インフルエンザウイルスが最初に感染する「鼻や喉の粘膜」に直接免疫を誘導します。
この「入口で防御する」仕組みによって、従来の不活化ワクチンでは得にくい粘膜免疫(IgA抗体)が期待できるとされています。

【生ワクチンという特徴】
フルミストは「弱毒化された生ワクチン」です。
これは、病気を起こさない程度に弱めたインフルエンザウイルスを利用しており、体内である程度増殖することで自然感染に近い免疫反応を引き出します。
そのため、単なる注射による不活化ワクチンよりも、感染防御に近い免疫をつくりやすいという利点があります。
一方で、生ワクチンには注意点もあります。
・免疫不全の方
・重度の喘息を持つ方
・強いアレルギーの既往がある方
・妊婦の方
これらの方には接種できません。
また、接種後は軽度の鼻水やくしゃみといった症状が出ることがあります。

【フルミストのメリットと課題】
・メリット
注射不要:注射が苦手なお子さまにとって負担が少ない。
粘膜免疫の誘導:感染の入口で免疫を獲得できる。
自然感染に近い反応:強い免疫応答が期待できる。
・課題
対象年齢が限定的:現在の日本では成人に使えない。
従来の注射型と比べるとかなり高価
基礎疾患がある場合に使用不可
流行株とのマッチングによって効果に差が出る可能性

【対象年齢と日本での使用状況】
日本ではフルミストは「2歳以上〜18歳未満」を対象として承認されています。
つまり、基本的には小児や思春期の年齢層に投与されるワクチンです。
アメリカなどでは広い年齢層に使用されてきた歴史がありますが、日本においてはまだ限られた使用範囲にとどまっています。

【当院での今シーズンの方針】
当院では成人の患者さまを主な対象としております。
そのため、対象年齢が小児に限定されるフルミストについては、今シーズンも採用しない方針といたしました。
成人の皆さまにとっては、これまで通り注射型のインフルエンザワクチンが標準的かつ確実な予防手段となります。
フルミストは「痛みが少ない」「自然感染に近い免疫が得られる」など魅力的な点もありますが、日本で成人に広く使えるようになるまでには、さらなる臨床データや制度的整備が必要です。
今後、フルミストが成人にも適応拡大される日が来れば、また新しい選択肢として検討できるかもしれません。
それまで最新の情報を踏まえながら、安全で確実な予防法を提供して参りますので、宜しくお願い致します

当院では今年も10月1日よりインフルエンザワクチンの接種を開始します。
インフルエンザは去年大流行したため、今年のワクチン接種は強く推奨されています。
ご希望の方はお気軽にお問い合わせください。
なお、かかりつけの患者様は定期通院日に接種することも可能です。

いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史

日本内科学会認定       内科認定医、総合内科専門医 
日本消化器病学会認定     消化器病専門医  
日本消化器内視鏡学会認定   消化器内視鏡専門医 
日本消化管学会認定      胃腸科専門医 
日本ヘリコバクター学会認定  ピロリ菌感染症認定医