いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。

“親や兄弟に大腸ポリープがあったら、自分もその可能性はありますか？”
と先日、受診者様から問い合わせを受けました。
少し調べたところ、Gastroenterology誌オンライン版2025年1月10日号にその回答となる論文が掲載されていましたので、ご紹介したいと思います

ドイツ・ハイデルベルク大学のYuqing Hu氏らは親族におけるポリープ診断の頻度と大腸がんの全体的なリスクおよび早期発症リスクとの関連性を評価するため大規模研究を行い、家族内での大腸ポリープ診断の頻度が大腸がんリスクと関連していると報告しました。

　彼らは、スウェーデンの大規模な家族性がんデータセット（1964～2018年）の1,167万6,043例を対象とし、親族における大腸ポリープ診断の頻度と大腸がんリスクの関連を調査しました。
親族のポリープ診断歴を「1回のみ」と「複数回」に分けて解析を行い、大腸がんと診断、移住、死亡、または2018年末のいずれか早い時点まで追跡しています。

調査の結果は以下の通りです。
・計1,167万6,043例が最長54年間追跡され、追跡期間中央値は31年、51%が男性であり、16万2,927例が大腸がんと診断されました。
・大腸ポリープの家族歴のない人（14万2,234例）と比較した場合、一等親血縁者（FDR：自分と2分の1の遺伝子を共有している親族：親、子、兄弟姉妹）に1回のポリープの診断歴がある人（1万1,035例）の全大腸がんリスク（SIR：標準化発症比）は1.4倍（95％信頼区間[CI]：1.3～1.4）、早期大腸がんリスクも1.4倍（95％CI：1.3～1.5）でした。
・1人のFDRに2回以上のポリープ診断歴がある場合、大腸がんリスクは有意に高くなりました
（全大腸がん1.8倍、早期大腸がん2.3倍）。
・1回診断されたFDRが2人以上いる場合も同様のリスク増が観察されました
（全大腸がん1.9倍、早期大腸がん2.2倍）。
・ポリープの診断を2回以上受けたFDRが2人以上いる場合、全大腸がんリスクは2.4倍、早期大腸がんリスクは3.9倍になりました。
・FDRのポリープ診断時の年齢が若い場合、大腸がんリスクが高くなりました、
二等親血縁者（自分と遺伝的に25％の遺伝子を共有している親族：祖父母、孫、叔父叔母、甥姪など）におけるポリープ診断歴は、診断回数が2回以上の場合のみ、リスク増加が認められました。

以上の結果より彼らは
「家族歴に基づく大腸がん検診の戦略を策定する際、親族のポリープ診断頻度を考慮することが重要である。
とくに複数回のポリープ診断歴を持つFDRが複数いる場合はリスクが顕著に増加するため、より積極的な検診が推奨される」と結論付けています。

今回の論文の結果だけをもって結論付けることはできませんが、
冒頭の“親や兄弟に大腸ポリープがあったら、自分もその可能性はありますか？”という問いに対する答えとしてはYesと考えてよさそうです。
さらに言うと、ポリープのある親族が多いほどそのリスクは上がるとも言えそうです。

当院では大腸カメラを実施した際に発見したポリープは即日切除しています。
痛みはありませんし、日帰りで済みますので、親、子、兄弟に大腸ポリープのあった方、または祖父母、孫、叔父叔母、甥姪などに複数回の大腸ポリープのあった方で心配だなという方はお気軽にお問い合わせください。

いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長　井坂利史

日本内科学会認定　　　　　　　内科認定医、総合内科専門医　
日本消化器病学会認定　　　　　消化器病専門医　　
日本消化器内視鏡学会認定　　　消化器内視鏡専門医　
日本消化管学会認定　　　　　　胃腸科専門医　
日本ヘリコバクター学会認定　　ピロリ菌感染症認定医