健診やドックで”肝機能障害”を指摘されていませんか?
結果表を見て見ぬふりしていませんか・・
いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。
皆さん、健康診断で「肝機能の数値が異常(AST、ALT、γ-GTPが高値)なので、精密検査を受けてください。」と指摘されたことはないでしょうか。
実は健診やドックで全て正常の”異常なし”という方はわずか5.6%とも報告されており、ほとんどの方が何かしらの異常を指摘されています。
その中で肝機能障害を指摘される方はとても多く、全受診者の25%にのぼると言われ、4人に1人は肝機能障害を指摘されていることになります。(恥ずかしながら私もその一人・・)
肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように症状がでません。
症状がなくても肝機能障害を指摘された際には、原因を判明させるためにも、再検査・精密検査を受けることをおススメします。
では、肝機能障害の原因としてはどのような疾患が多いのでしょうか?
①脂肪肝
原因として一番多く、肝臓に中性脂肪が蓄積した状態です。
脂肪肝は、アルコールが原因の「アルコール性脂肪肝」と、アルコールには無関係の肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が原因で起こる「非アルコール性脂肪肝」に分けられます。
脂肪肝の中には、慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんに進行すること怖い経過をたどるケースもありますので、軽視できません。
対応としては原因によって異なりますが、一般的にアルコールが原因の場合は、節酒の指導が行われます。
肝硬変になる前であれば、肝臓は元に戻ります。
肥満や生活習慣病が原因の場合は、「過食・偏食をさける」「適度な運動」「減量」が治療の基本となります。
残念ながら保険適用のある薬剤は現状ではありません。
②ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎のなかで、患者数が多く慢性肝炎の原因になるのはB型肝炎とC型肝炎です。
これらはウイルスが血液・体液を介して感染して起きますが、いずれもきちんと治療を受ければ、炎症を抑えて肝臓がんの発症を抑えることができますので、是非ともその機会を逃さないようにしてください。
具体的にはB型肝炎ではウイルスの増殖を抑える薬、C型肝炎ではウイルスを退治する薬があります。
治療を受けた後も採血検査による肝機能の評価と超音波検査による肝臓がん発症の監視が必要です。
③薬剤性肝障害
どんな薬でも頻度に差があるものの肝臓に障害を起こす可能性があります。
最近新たに飲みだした薬が原因であることも、以前から飲んでいた薬が原因であることもあります。
原因薬剤を調べるためにもお薬手帳を必ず持参して受診してください。
市販されているサプリメントが原因であることもあります。
④胆石による肝障害
胆のうに結石ができても、ほとんどは無症状です。
ただし、この結石が胆のうから動いて胆汁の通り道である総胆管に落ちると、体が黄色になる黄疸や腹痛、嘔吐、発熱などを起こし、採血検査では肝機能障害を認めます。
高齢者では無症状なこともあり、採血結果を契機に見つかることもあります。
総胆管に落ちた結石は内視鏡による摘出術が原則必要です。
⑤自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎
これらは原因が不明なため難病指定されている疾患です。
症状がないことも多いため、採血による肝機能異常を契機に見つかることがあります。
前者はステロイドによる治療、後者は胆汁の流れをよくする薬による治療がなされます。
コントロールがうまくいかない場合には肝移植も視野に入る疾患です。
いずれも中年の女性に多くみられます。
⑥代謝性肝障害
肝臓は鉄や銅などのミネラル分を調整する働きがありますが、遺伝的な原因でこれらが過剰に肝臓に蓄積してしまうことがあります。
具体的には鉄であればヘモクロマトーシス、銅であればウィルソン病という疾患名になります。
ただ、これらはまれです。
⑦更年期によるエストロゲン低下に伴う肝障害
女性の場合は更年期になるとエストロゲンが低下してきます。
これによりコレステロールや中性脂肪が上昇してきます。
肝臓はこれらの代謝を担っているわけですが、以前より増えたコレステロールや中性脂肪を代謝することになり、その負担により肝障害(この場合はγ-GTPが上昇する)を生じることになります
いわゆる更年期症状も伴っていれば婦人科への受診を提案し、ホルモン治療をすることもあります。
⑧消化器系がんの肝転移
お腹の臓器の血液は血管を介して肝臓に流れます。
従って、お腹の臓器に発生したがん細胞は血流に乗って肝臓へと入り込むため、肝臓へと転移します。
稀に原発臓器の症状がなく、偶然、採血で肝機能異常を指摘されてがん発見の契機となることがあります。
以上、健康診断や人間ドックでよく指摘される肝機能異常について解説しました。
原因は様々ですが、ほとんどが脂肪肝のことが多いので、過剰に心配しなくても大丈夫です。
ただ、一度は消化器内科を受診して、念のため詳しい検査を受けるようにしてください。
当院では採血と腹部エコーによる精査が可能ですし、更なる精査が必要と判断した場合には病院での画像検査(CTやMRI)を予約致します。
いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史
日本内科学会認定 内科認定医
総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本消化管学会認定 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会認定 ピロリ菌感染症認定医
皆さん、健康診断で「肝機能の数値が異常(AST、ALT、γ-GTPが高値)なので、精密検査を受けてください。」と指摘されたことはないでしょうか。
実は健診やドックで全て正常の”異常なし”という方はわずか5.6%とも報告されており、ほとんどの方が何かしらの異常を指摘されています。
その中で肝機能障害を指摘される方はとても多く、全受診者の25%にのぼると言われ、4人に1人は肝機能障害を指摘されていることになります。(恥ずかしながら私もその一人・・)
肝臓は「沈黙の臓器」と言われるように症状がでません。
症状がなくても肝機能障害を指摘された際には、原因を判明させるためにも、再検査・精密検査を受けることをおススメします。
では、肝機能障害の原因としてはどのような疾患が多いのでしょうか?
①脂肪肝
原因として一番多く、肝臓に中性脂肪が蓄積した状態です。
脂肪肝は、アルコールが原因の「アルコール性脂肪肝」と、アルコールには無関係の肥満や高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が原因で起こる「非アルコール性脂肪肝」に分けられます。
脂肪肝の中には、慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんに進行すること怖い経過をたどるケースもありますので、軽視できません。
対応としては原因によって異なりますが、一般的にアルコールが原因の場合は、節酒の指導が行われます。
肝硬変になる前であれば、肝臓は元に戻ります。
肥満や生活習慣病が原因の場合は、「過食・偏食をさける」「適度な運動」「減量」が治療の基本となります。
残念ながら保険適用のある薬剤は現状ではありません。
②ウイルス性肝炎
ウイルス性肝炎のなかで、患者数が多く慢性肝炎の原因になるのはB型肝炎とC型肝炎です。
これらはウイルスが血液・体液を介して感染して起きますが、いずれもきちんと治療を受ければ、炎症を抑えて肝臓がんの発症を抑えることができますので、是非ともその機会を逃さないようにしてください。
具体的にはB型肝炎ではウイルスの増殖を抑える薬、C型肝炎ではウイルスを退治する薬があります。
治療を受けた後も採血検査による肝機能の評価と超音波検査による肝臓がん発症の監視が必要です。
③薬剤性肝障害
どんな薬でも頻度に差があるものの肝臓に障害を起こす可能性があります。
最近新たに飲みだした薬が原因であることも、以前から飲んでいた薬が原因であることもあります。
原因薬剤を調べるためにもお薬手帳を必ず持参して受診してください。
市販されているサプリメントが原因であることもあります。
④胆石による肝障害
胆のうに結石ができても、ほとんどは無症状です。
ただし、この結石が胆のうから動いて胆汁の通り道である総胆管に落ちると、体が黄色になる黄疸や腹痛、嘔吐、発熱などを起こし、採血検査では肝機能障害を認めます。
高齢者では無症状なこともあり、採血結果を契機に見つかることもあります。
総胆管に落ちた結石は内視鏡による摘出術が原則必要です。
⑤自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎
これらは原因が不明なため難病指定されている疾患です。
症状がないことも多いため、採血による肝機能異常を契機に見つかることがあります。
前者はステロイドによる治療、後者は胆汁の流れをよくする薬による治療がなされます。
コントロールがうまくいかない場合には肝移植も視野に入る疾患です。
いずれも中年の女性に多くみられます。
⑥代謝性肝障害
肝臓は鉄や銅などのミネラル分を調整する働きがありますが、遺伝的な原因でこれらが過剰に肝臓に蓄積してしまうことがあります。
具体的には鉄であればヘモクロマトーシス、銅であればウィルソン病という疾患名になります。
ただ、これらはまれです。
⑦更年期によるエストロゲン低下に伴う肝障害
女性の場合は更年期になるとエストロゲンが低下してきます。
これによりコレステロールや中性脂肪が上昇してきます。
肝臓はこれらの代謝を担っているわけですが、以前より増えたコレステロールや中性脂肪を代謝することになり、その負担により肝障害(この場合はγ-GTPが上昇する)を生じることになります
いわゆる更年期症状も伴っていれば婦人科への受診を提案し、ホルモン治療をすることもあります。
⑧消化器系がんの肝転移
お腹の臓器の血液は血管を介して肝臓に流れます。
従って、お腹の臓器に発生したがん細胞は血流に乗って肝臓へと入り込むため、肝臓へと転移します。
稀に原発臓器の症状がなく、偶然、採血で肝機能異常を指摘されてがん発見の契機となることがあります。
以上、健康診断や人間ドックでよく指摘される肝機能異常について解説しました。
原因は様々ですが、ほとんどが脂肪肝のことが多いので、過剰に心配しなくても大丈夫です。
ただ、一度は消化器内科を受診して、念のため詳しい検査を受けるようにしてください。
当院では採血と腹部エコーによる精査が可能ですし、更なる精査が必要と判断した場合には病院での画像検査(CTやMRI)を予約致します。
いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長 井坂利史
日本内科学会認定 内科認定医
総合内科専門医
日本消化器病学会認定 消化器病専門医
日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医
日本消化管学会認定 胃腸科専門医
日本ヘリコバクター学会認定 ピロリ菌感染症認定医
肝臓を調べるのにはエコー(超音波検査)が適しています