グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



HOME >  院長ブログ >  胃のポリープはとらなくていいの?

胃のポリープはとらなくていいの?


いさか内科・消化器内視鏡クリニックの井坂です。

お陰様で開院して1週間が過ぎました。
怒涛の日々でしたが、明日は休診日ということもあり、久しぶりに今回は医療の事について投稿したいと思います。
以前のブログで胃レントゲンの結果欄に記載される所見について解説しました。
今回は胃レントゲンだけでなく胃カメラでもよく見られる所見であるポリープについて詳しく解説します。
時折、患者さんから“胃のポリープは放っておいていいの?”と尋ねられることがありますので、その点を念頭に説明したいと思います。

一般的にポリープとは粘膜の表面が部分的に盛り上がった病変の総称であり、良性の病変から悪性の病変まで含んでいますので、放置していい病変と治療すべき病変が含まれていることになります。
それぞれ解説していきます。
【胃底腺ポリープ】
最も多くみられるポリープです。
内視鏡で観察すると周囲の粘膜と同じような色調で表面はツルっとしており、小さいものがほとんどです。
ピロリ菌に感染していないきれいな胃に発生しますので、このポリープがあればむしろ健康な胃と思ってもらっていいです。
ちなみに私もあります。
このポリープはがん化することはまずありませんので、ポリープを摘除する必要はありません。
(最近になって胃底腺ポリープからがんが発生したという症例報告が散見されますが、頻度的にはかなり稀と考えていいです)
胃レントゲンでポリープと指摘された際はほとんどがこれであり、むしろ健康な胃の証です。
専門医が読影すれば背景の粘膜の所見を加味して“軽度異常”と判定できますが、非専門医が判断した場合は他のポリープとの鑑別ができずに要精密検査とされてしまう場合があります。
一度でも内視鏡検査を受けておいて、このポリープと診断されたなら、以後の指摘もこの胃底腺ポリープと考えて差し支えありません。
なお、逆流性食道炎に対してよく処方される胃酸を抑える薬を長期服用している方では、この胃底腺ポリープが増加・増大する傾向があると報告されています。
必要以上に内服することはあまり勧められていませんので、気になる方は御相談ください。

粘膜と同色調の小さいポリープが散在しています

【胃過形成性ポリープ】
赤みが強く凹凸が目立つポリープです。
基本的には、ピロリ菌が感染した炎症の強い胃に発生します。
ピロリ菌を除菌し、胃の炎症が引くと、縮小・消退することがありますので、ピロリ菌が陽性の場合はまずは除菌治療を検討します。
大きさが2cmを超えるものは、頻度は高くありませんが、がんの成分が発生してくる可能性があるため、内視鏡による切除を検討します。
また、逆流性食道炎による胃と食道の境界で炎症が繰り返されることで過形成性ポリープが形成されることもあります。この場合は胃酸分泌を抑制する薬で縮小・消退することがあります。

赤みを帯びたポリープです

【腺腫】
ピロリ菌によって炎症が続いた胃に発生する腫瘍性のポリープです。
内視鏡では白色調を呈する事が多く、形態は平坦なものから丈の高い結節状を呈するものまで様々です。
基本的には良性ですので、小さいものは経過観察で構いません
経過観察中に増大傾向を呈するものや表面の所見によっては、がん化した可能性を疑いますので、切除の適応と考えます。
現在は比較的大きな病変でも内視鏡治療による体への負担が少ない治療で完治が望めます。
治療自体は総合病院へ紹介しますが、その拾い上げは観察眼にかかっていますので、消化器内視鏡専門医によるフォローをお勧めします。

やや白っぽい平坦なポリープです。

青い色素をかけることで見やすくなります。

【粘膜下腫瘍】
似て非なるものに粘膜下腫瘍というものがあり、厳密にはポリープとは区別されます。
粘膜の下に腫瘤ができて粘膜の下から盛り上がった病変の総称で、なだらかに隆起するのが特徴です。
胃の壁は5層構造になっていますので、どの層から発生したかによっていろいろ種類があります。
いずれもほとんどが良性ですが、稀に悪性のものもあります。
大きさや表面の性状、経時的な変化によって、良悪性の判断を行い、更なる精密検査を必要とする場合があります。

胃の壁の中から発生するので表面は正常の粘膜です

【胃底腺型胃がん】
これはやや専門的になります。
ピロリ菌は胃がんの発生に大きく関与しているわけですが、この胃底腺型胃がんはピロリ菌に感染してない胃から発生します。従って、特殊ながんではあるのですが、最近、専門医の間で報告が増えてきており、注目されている病変でもあります。
基本的にピロリ菌の感染していないきれいな胃に発生する小型のポリープ様なので、前述の胃底腺ポリープと紛らわしく、内視鏡で詳細に観察しないと疑われもしません。
経験豊富な専門医ならその“違和感”を感じ、それが発見に繋がることになりますので、定期的に胃カメラを受けるなら消化器内視鏡専門医による検査を是非ともお勧めします。

大原秀一:胃底腺型胃癌の臨床像、内視鏡所見.日本消化器内視鏡学会誌2017 年 59 巻 4 号 p. 413-423より引用

以上、胃のポリープについて解説しました。
胃のレントゲンで胃ポリープを指摘された場合に、どれに該当するか知っておくことで適切な対応をとることができるわけですが、レントゲンだけではポリープを詳細に観察することは難しいため、気になる方は一度、内視鏡による精査を受けてください。

いさか内科・消化器内視鏡クリニック 院長 井坂利史

日本内科学会認定       内科認定医
               総合内科専門医 
日本消化器病学会認定     消化器病専門医  
日本消化器内視鏡学会認定   消化器内視鏡専門医 
日本消化管学会認定      胃腸科専門医 
日本ヘリコバクター学会認定  ピロリ菌感染症認定医