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直腸がんは身近です ~坂本龍一さんの逝去に際して~


いさか内科・消化器内視鏡クリニックの井坂です。
昨日2023.4.3に音楽家の坂本龍一さんが逝去されたと報道されました。
直接的な死因は直腸がんとの事でした。
享年71歳とのことでしたので、2022年の日本人の平均寿命(男性:79.64歳、女性:86.39歳)からするとやや早い気がします。
自分の中では坂本さんと言えば“戦場のメリークリスマス”“リゲインのテーマ曲”“ラストエンペラー”のイメージが強く、才能にあふれ物腰も穏やかな紳士といったイメージです。
謹んでお悔やみ申し上げます。

今回はこの報道を受けて、直腸がんを含めた大腸がんの統計的な面をお伝えしたいと思います。
国立がん研究センターがん情報サービス(ganjoho.jp)によるデータを簡単に解説したものになりますので、
詳しく知りたい方はがん情報サービス HOME:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)をご覧ください。

① がんによる臓器別死亡数
2021年のがんによる死亡数は約37万人(男性21万人、女性15万人)でした。
死亡数の多いがんの部位は(その他を除いて)
男性 1位:肺  2位:大腸 3位:胃
女性 1位:大腸 2位:肺  3位:膵臓
男女を合計すると1位:肺 2位:大腸 3位:胃
→日本人は胃や大腸といった消化器系のがんによる死亡数が多く、直腸がんを含めた大腸がんで亡くなることは決して稀ではありません。
特に女性においては第1位です。(大腸がん=結腸がん+直腸がんとしています)

臓器別死亡数:男性

臓器別死亡数:女性

② がん罹患数(がんにかかった人の数)
部位別の罹患数をみると
男性 1位:前立腺 2位:大腸 3位:胃 4位:肺 
女性 1位:乳   2位:大腸 3位:肺 4位:胃
になります。

臓器別罹患数:男性

臓器別罹患数:女性

これらのグラフから気づくことはないでしょうか?
それは肺がんや大腸がんは罹患数(かかった人数)に比べて死亡数が多いということです。
これは診断された時点で既に進行した状態(ステージ:病期が進んだ状態)であることが関連していると思われます。
どのがんでも共通して言えることですが、ステージが進んだ状態のがんの治癒は困難です。

③ 5年生存率(診断から5年後に生存している割合)
大腸がんを直腸がんと直腸以外の結腸がんに分け、更にステージ別に比べてみると、どちらにおいても早期の段階であるステージ0、Ⅰ、Ⅱでは9割前後の人が生存しています。
つまり、死亡数の多い大腸がんでも早期の段階で診断されれば、命を奪われることはないのです。
坂本さんのステージ等の病状について自分は全く知りませんが、経過からは少なくとも早期の段階で診断されたわけではなさそうです。

5年生存率

Ifを話しても仕方ないわけですが、健診やドックなどで便潜血検査を受けていたのなら、大腸カメラをうけていたのなら、もう少し早期のステージで診断できたかもしれません。
そうであったなら、彼のピアノをもう少し聞けたのかもしれません。

以上、坂本龍一さんを追悼しつつ、一消化器内科医として思う事をつぶやいてみました。
最後にもう一度お伝えします。
大腸がんは早期で見つけることができれば怖くありません!
健診やドックの便潜血陽性を放置していたり、血便を痔だと決めつけていたりする方などおられましたら、今回を機に考え直してみてはいかがでしょうか。
当院ではなるべく楽に大腸カメラを受けて頂くために配慮しておりますので、お気軽に受診してください。
大腸カメラを受けて頂くことで、安心もしくは早期診断からの早期治療に繋げることができるかもしれません。

いさか内科・消化器内視鏡クリニック 院長 井坂利史

日本内科学会認定       内科認定医
               総合内科専門医 
日本消化器病学会認定     消化器病専門医  
日本消化器内視鏡学会認定   消化器内視鏡専門医 
日本消化管学会認定      胃腸科専門医 
日本ヘリコバクター学会認定  ピロリ菌感染症認定医