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緩和研修会


いさか内科・消化器内視鏡クリニック院長の井坂です。

2022.9.10に静岡県立静岡がんセンターで開催された緩和ケア研修会に参加してきましたので、感想を投稿したいと思います。

まず、すこし堅苦しい話から・・
厚生労働省は、がん対策基本法に基づくがん対策推進基本計画(平成19年6月15日閣議決定)において、「すべてのがん診療に携わる医師が研修等により、緩和ケアについての基本的な知識を習得する」ことを目標としています。
これを受けて、がん診療に携わるすべての医師が、緩和ケアについての基本的な知識を習得し、がん治療の初期段階から緩和ケアが提供されることを目的に、これら医師に対する緩和ケアの基本的な知識等を習得するための研修会を行うように、各都道府県に厚生労働省健康局長通知「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会の開催指針」が出されました。
 日本緩和医療学会では、これらを新たに組み込んだ教育プログラムを作成し、「日本緩和医療学会PEACEプロジェクト」として実施することとなり・・・

大丈夫ですか?意識飛んでいませんか?
簡単に言い換えますと、
“がん診療に携わる医師の緩和ケアの部分における底上げをしましょう”ということです。

個人のクリニックでは総合病院のようにがんに対する手術や抗がん剤、放射線治療といった積極的治療は困難ですが、痛みの管理やスピリチュアルな領域での対応は可能です。
よって、今後、クリニックを開院するにあたり、クリニックレベルでがん患者さんのお役に立てることが少しでもできればと思い立ち、PEACEプロジェクトに参加することにしました。

具体的には
まずWebでの講義を受けます(いわゆるe-learning)
15項目のテーマに分かれていて、最後に理解度をチェックするテストもありました。
これが、中々のボリュームでした・・。

そして第2弾として今回の研修会がありました。
朝8時半~夕方5時まで丸1日の日程です。(朝6時に家を出て高速道路を飛ばしていきました)
今回の参加者は医師、臨床心理士、薬剤師等で自分も含めて16名でした。
内容は講義よりもグループワークが中心の内容でしたので、簡単に紹介したいと思います。

① ロールプレイ
がん診療において悪い知らせを伝える際のコミュニュケーションスキルを得ることを目標としており、具体的には3人1組の班を形成し、医師役、患者役、観察者の役を交代で担当、それぞれがシナリオを設定して取り組むといった内容でした。
7分間、いわゆる“Bad news”を伝えるシーンをやり取りし、その後に観察者も含めてフィードバックを行いました。
自分が専門とする消化器内科は胃がん、大腸がんといったがんを扱うので、こういったシーンは比較的多いのですが、この極めてデリケートなシーンを今まで指導してもらったことはありませんので、大変有意義でした。
特に患者役をした時に感じたのは、悪い知らせを聞いた時には“間”そして“理解度の確認”が必要という点です。
とかく医師側としては正確に病状を説明したいがために、漏らすことなく一気に全てを話してしまいがちです。
これは日常診療で限られた時間内でという条件も影響しているかもしれませんが、知らせを聞かされた患者側は、頭が真っ白になってしまい、おそらく内容の半分も届いていないのではないかと感じました。
従って、理解度を確認しながら、場合によっては数回にわけて説明してもよいのではと考えた次第です。

② ディスカッション
6人で1班を形成。
ある患者さんが設定されており、この患者さんに対する全人的苦痛に対する緩和ケアをみんなで話し合うという内容でした。
医師、臨床心理士、薬剤師のそれぞれの立場から意見が交わされ、これも普段にはない気づきがあり、大変有意義でした。

これらのグループワークを通して感じたことは、がん患者に対する緩和ケアは医師個人だけではなく、チームで対応するべきだということです。
担当する医師、看護師だけではなく、薬剤師、ケアマネージャー、ソーシャルワーカー、往診医、訪問看護師そして患者本人と家族によるチームです。
大きな総合病院ではこういった他職種が集まったチームは形成しやすいですが、個人クリニックでは一筋縄ではいきません。
これには密なコミュニュケーション=地域連携があってこそ成り立つものです。
地域連携を担ってくれる具体的な職種の方々を思い浮かべながら、西日でまぶしい高速道路飛ばして帰りました。

後日、修了証書が送られてきました。
一般的にこの手の代物はいわゆる賞状のような厚紙で頂くのですが、ごく普通のペラ紙でした・・。
決して批判しているわけではありませんよ。決して・・